トイレに立つと、少し遅れて足音がついてくる。台所に行けば足元にいて、お風呂から出るとドアの前で待っている。「寂しいのかな」「うちの子は甘えん坊なのかな」と思いながら、つい見てしまう方も多いのではないでしょうか。実は、猫がついてくる行動そのものを調べた研究は、まだ見つかっていません。そこでこの記事では、台所、ソファ、ドアの前といった場面ごとに、これまでの研究から分かっていることを紹介します。
台所や朝に来るのは、ごはんがもらえる時を覚えているから
猫の「ニャー」は、もともと人に向けた声です。子猫のうちは、寒い時やお腹が空いた時に母猫に向かって鳴きますが、大人になると猫どうしではほとんど鳴かなくなります。それでも人には、一生鳴き続けます。鳴くと人が動いてくれるから、と考えられています。
分かりやすいのが台所です。人が台所に入るたびに、ごはんがもらえるかもしれないと鳴くようになる猫がいます。朝、鳴いて飼い主を起こし、朝ごはんを催促する猫もいます。台所や寝室までついてくるのも、「ここに行けば、ごはんがもらえるかも」と覚えているからかもしれません。
一方、帰宅した時や家の中で顔を合わせた時、話しかけた時に鳴きながら寄ってくるのは、あいさつです。
座るとそばに来るのは、ごはんより人を選ぶ猫が多いから
ごはんの時間でもないのに、座るとすぐ隣に来る子もいます。
人とのふれあい、食べ物、おもちゃ、においの4つのうち、猫がどれを一番好むかを調べた実験があります。多くの猫が一番に選んだのは人とのふれあいで、食べ物はその次でした。飼い猫でも、保護施設の猫でも結果は同じです。ただし、どれを選ぶかは猫によってかなり違いました。
猫は、なでてほしい、遊んでほしい、話しかけてほしいと鳴いて求めることもあります。毎日長くひとりで過ごす猫ほど、構ってほしくて鳴きやすいこともあります。座るとそばに来るのは、ごはんではなく、飼い主さんとのふれあいを求めているのかもしれません。
ドアの向こうにいても、猫は声で居場所を追っている
トイレやお風呂のドアの前で、出てくるまでじっと待っている子もいます。飼い主が何をしているのか気になるから、と言われています。
これに関わりそうな実験を、京都大学などの研究チームが行っています。部屋に猫だけを残し、部屋の外に置いたスピーカーから、飼い主の声で何度か名前を呼びます。その直後、今度は部屋の中の離れたスピーカーから同じ声を流すと、猫は一番驚いた様子を見せました。外にいるはずの飼い主の声が、急に別の場所から聞こえてきたからです。猫の鳴き声や物音では、この驚きは見られませんでした。
この結果から、猫は姿が見えなくても、声を手がかりに飼い主がどこにいるかを頭の中で思い描いていると考えられています。ドアの前で待つ時も、向こうにいる飼い主さんを思い浮かべているのかもしれません。
家の中でついてくるのは、分離不安のサインとは限らない
ついてくると「分離不安かも」と言われますが、研究で記録された様子は少し違います。
行動の相談で診察を受けた猫の記録から、飼い主と離れている時にだけ問題が出る猫を集めた調査があります。最も多かったのはトイレ以外の場所でのおしっこで、そのうち4分の3は飼い主のベッドの上でだけしていました。ほかには、トイレ以外でのうんち、鳴きすぎ、物を壊す、体をなめすぎる、が挙がっています。この中に「あとをついて回る」は入っていません。
つまり、家の中でついてくるだけでは、不安を抱えているかどうかは分かりません。気になる場合は、留守番のあとの様子を見てみてください。見るのは、ベッドが汚れていないか、物が荒らされていないかです。引っ越しなどで暮らしが変わった時に、そばを離れなくなる猫もいると言われています。
まとめ
- 大人の猫は、猫どうしではほとんど鳴かず、人に向かって鳴く
- 台所や朝についてくるのは、ごはんの時を覚えているからかも。帰宅した時に寄ってくるのはあいさつ
- 多くの猫は、食べ物よりも人とのふれあいを選んだ
- 猫は姿が見えなくても、声で飼い主の居場所を思い描いている
- 分離不安として記録された様子に「ついて回る」は入っていない。気になる時は留守番のあとの様子を見る
同じ「ついてくる」でも、ごはんを待っている時、ふれあいたい時、ただ飼い主さんを追っている時があります。明日ついてきたら、台所なのか、ソファなのか、ドアの前なのか、行き先を見てみてください。ごはんを待つ顔と、飼い主さんを追う顔は、きっと少し違って見えます。
TOMORU|犬猫と暮らす毎日のために、ケアを考えています。
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