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犬のしっぽは振り方で意味が変わる? うれしい時とそうでない時

帰宅したときにしっぽをブンブン振って出迎えられると、それだけで一日の疲れが取れる気がします。しっぽを振っている=うれしい、と思っている方がほとんどではないでしょうか。ところが、犬が振るのはうれしい時だけではありません。同じように見える動きでも、中身がまったく違うことがあります。この記事では、しっぽの何を見れば気持ちが読めるのか、右と左で何が違うのか、そしてなぜ犬はこんなにしっぽを振るのかをまとめました。

しっぽを振るのは、うれしい時だけではない

しっぽを振る動きは、気持ちが高ぶった時に出ます。ただしこの「高ぶり」には、うれしい方向だけでなく、緊張や警戒の方向も含まれます。どちらでも振るので、振っていること自体は、喜んでいる証拠になりません。攻撃的な犬のほうがよく振っていた、という研究もあるほどです。

しっぽを低い位置にして振っている時は、とくに注意して見たいところです。イヌ科の動物には、しっぽを低くして振ることで「争う気はない」と相手に見せる使い方があります。相手をなだめる合図として使われる振り方です。

「しっぽを振っているから触っても大丈夫」という読み方が危ないのは、このためです。見るべきなのは、振っているかどうかではなく、どう振っているかのほうです。

高さは、その子のふだんの位置から見る

しっぽの高さは、その時の気持ちの強さや向きを映します。高く上がっていれば強気、下がっていれば不安、というのがおおまかな方向です。ただ、ここには落とし穴があります。犬種によって、もともとのしっぽの高さがまるで違うからです。背中の上でくるんと巻いている犬もいれば、いつも斜め下に垂れている犬もいます。垂れている犬のしっぽが水平まで上がっていれば、それはその子にとってはかなり高い位置です。

高さは、よその犬と比べても意味がありません。その子が落ち着いている時にどこにあるかを覚えておいて、そこから高いか低いかで見ます。獣医の行動学の専門家も、本来の位置から相対的に見るように説明しています。

右と左で、中身が違う

あまり知られていませんが、犬のしっぽは左右のどちらに大きく振れるかでも中身が違います。飼い主や知っている人など、うれしい方向の相手には右寄りに振れます。逆に、知らない強そうな犬など、引きたくなる相手には左寄りに振れます。脳が左右で分かれて働いていることが、しっぽの振れ方に出ていると考えられています。

面白いのは、犬の側もそれを見ているところです。左寄りに振る犬の映像を見せられた犬は、右寄りの映像を見た時よりも、ふるまいにも体の反応にも、ストレスの様子が多く出ました。犬どうしは、その差を受け取っています。

同じ人と何度か会ううちに、振り方が左寄りから右寄りへ移っていった、という観察もあります。その人が「知らない相手」から「知っている相手」に変わっていく過程が、しっぽに出ていたことになります。

ただし傾向の話で、1回の振り方から左右で判定できるものではありません。そういう仕組みがある、という程度に受け取ってください。

そもそも、こんなに振るのは犬だけ

そもそも犬は、なぜこれほどしっぽを振るのでしょうか。子犬が振りはじめるのは、生後4〜5週ごろです。同じように人の手で育てられたオオカミの子は、この時期にほとんど振りませんでした。差は生後3週の時点ですでに出ています。育て方をそろえても、それだけ早くから違いが出たということです。

犬は、ほかのどのイヌ科の動物よりも多くの場面で頻繁に振ります。人と接する時は、知らない人にも振りますが、いちばん多いのは飼い主がいる時です。食べ物をもらえない場面で調べた研究では、人がいる時のほうがよく振っていて、何かを求める合図の働きもあるのかもしれません。

なぜ犬だけがこうなったのかは、まだ決着がついていません。人がその動きを好んで選んできたのか、おとなしさを選んだ結果なのか。どちらの説も、人と暮らしてきた長い歴史の中で、しっぽの振り方が変わってきたと考えています。

まとめ

  • 振る動きは気持ちの高ぶりに伴うもので、うれしい時に限らない。しっぽを低くして振るのは「争う気はない」の合図
  • 高さは犬種でもともと違う。その子の落ち着いている時の位置を覚えて、そこから見る
  • うれしい方向では右寄り、引きたくなる相手には左寄りに振れる。犬どうしはその差を受け取っている
  • 子犬は生後4〜5週から振りはじめ、同じように育てたオオカミの子はほとんど振らない
  • 人と接する時は、飼い主がいる時にいちばんよく振る

明日、帰宅してしっぽを振って迎えてくれたら、高さと、左右のどちらへ大きく振れているかを見てみてください。そこには、その子がこちらに向けている言葉が出ています。

参考:Biology Letters(英国王立協会の生物学の学術誌)掲載のしっぽ振りの総説(2024年)

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