愛犬の名前を呼びながら、背中や頭をなでる。毎日のなにげない時間ですが、犬の側にはどんなふうに届いているのでしょうか。じつは、犬にとっては言葉より手のほうが強く届いている——そんな実験があります。この記事では、なでることが犬にとって何なのか、どこが届きやすいのか、そして「もっと」「今はいい」という返事の聞き方をまとめました。
言葉より、手のほうが届いている
2015年に Behavioural Processes に載った実験があります。犬に「褒め言葉をかけてくれる人」と「なでてくれる人」を選ばせたところ、犬はなでてくれる人のそばに居続けました。褒め言葉だけの人のそばにいた時間は、何もしない人のそばにいた時間と変わらなかったそうです。
しかも、飼い主さんが褒めていて、知らない人がなでている、という組み合わせでも、犬はなでるほうへ行きました。途中で二人の役割を入れ替えると、犬もなでる側へ移りました。時間が経っても飽きる様子はありません。
少し寂しく聞こえるでしょうか。でも、読み方を変えるとこうも言えます。言葉が届いていないというより、手がそれだけ強く届いている。「いい子だね」と声をかける時、私たちはたいてい同時に手を添えています。あの時間は、ちゃんと伝わっていました。
犬が喜ぶのは、自分では手が届かない場所
胸、顎の下、耳の後ろ、首まわり。犬がなでられて目を細める場所は、だいたい決まっています。どれも自分の舌も足も届かない場所です。
飼い主と暮らす犬24頭に、9通りの触り方を試した2012年の実験(Applied Animal Behaviour Science)でも、胸と顎の下をなでた時は、頭や足を触った時にくらべて、落ち着かないしぐさが少なくなりました。その子の好みというより、犬に共通した傾向があるようです。
同じ研究者が心拍を測った2014年の研究では、もうひとつ分かっています。馴染みのある人になでられている時、犬の心拍は落ち着いていきました。知らない人の手では反対に上がります。なでて落ち着かせられるのは、その子が知っている手だけ、ということです。毎日なでているその手には、それだけの意味があります。
苦手なほうも書いておきます。足や背中、口のまわりを押さえる形、首輪をつかむ手、そして頭の上から降りてくる手は、犬には別の意味に映ることがあります。手は上からではなく、下からゆっくり。それだけで受け取り方が変わります。
その子の答えを聞く、5秒
どこが好きかは、その子に聞けます。5秒ほどなでたら、手を止めて引いてみてください。
体を寄せてくる、鼻や前足で手を押してくる、なでてほしいところを差し出す——これは「続けて」の返事です。そのまま動かない、目をそらす、すっと離れていく——「今はいい」の返事です。
動物行動の訓練士が広めているやり方で、研究で確かめられた手順ではありません。ただ、手を止めてみないと、犬には返事をする機会がないというのは、そのとおりだと思います。なで続けている間、犬はずっと聞かれていないことになります。
場所を変えて何度か試すと、その子の順番が見えてきます。研究では胸と顎の下でしたが、うちの子は耳の後ろがいちばん、ということもあるでしょう。その時は、その子の答えのほうが正しいです。
まとめ
- 犬は褒め言葉よりなでられるほうを選んだ(2015年 Behavioural Processes)。声をかける時に添えていた手は、ちゃんと届いていた
- 喜ぶのは、自分では手が届かない場所。胸・顎の下・耳の後ろ・首まわり
- 落ち着かせられるのは、知っている手だけ。馴染みのある人になでられている時、犬の心拍は落ち着く
- 手は下から、ゆっくり。上から降りてくる手や、押さえる形は別の意味に映る
- 5秒で手を止めて、返事を聞く。寄ってきたら続けて、動かなければ今はいい
今夜、名前を呼びながら、胸のあたりを5秒。手を止めた時に返ってくるものが、その子がずっとしていた返事です。
TOMORU|犬猫と暮らす毎日のために、ケアを考えています。
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