窓辺をのぞいて、廊下を通って、ソファの裏を確認して、また戻ってくる。用があるようには見えないのに、毎日ほとんど同じ道を歩いています。座っている飼い主の横をすっと通り過ぎて、しばらくすると、何もなかったような顔で丸くなる。あの往復は、猫にとっては大事な時間です。今日も、家がゆうべと同じだった。それを確かめて歩いています。
猫は毎日、家がゆうべと同じかを確かめている
見回りといっても、警備ではありません。誰かを追い払うために歩いているのではなく、いつもの場所がいつもどおりかを見にいっています。
外で暮らす猫を600時間以上追いかけた研究(1994年 Canadian Journal of Zoology)でも、猫は縄張りを守り抜くというより、自分の歩く範囲をまわって、自分のにおいを付け直していました。守るのではなく、確かめて、上書きする。それが猫の一日の仕事です。
家の中で暮らす猫には、その範囲が家になります。寝床、ごはんの場所、窓辺、いちばん高いところ。大事な場所はもう決まっていて、そこを順番に見ていく。だから道が毎日同じになります。
通り道には、その子の印が置いてある
同じ研究に、こんな結果があります。猫が爪をとぐ木は、縄張りの端ではなく、よく通る道沿いに集まっていました。境目に立てる看板ではなく、通り道に置いた目印です。
においを付ける方法は、爪とぎだけではありません。顔や体をこすりつける、あれもそうです。額、あご、口のまわり、しっぽのつけ根、そして肉球。このあたりからにおいが出ていて、こすりつけるたびに、その子のにおいが少しずつ残ります。
家を見回してみてください。ソファの角。ドアの枠。柱の、いつも同じ高さのところ。テーブルの脚。その子が毎日こすっている場所が、たぶんいくつかあります。こちらには何もない廊下が、その子にとっては自分の印が並んだ道です。歩きながら、その印を置き直している。だから同じ道を通ります。
家が変わると、猫はもう一度確かめ直す
模様替えをした日。荷物が届いた日。誰かが来た日。そういう日は、見回りが長くなります。何度も同じところへ戻ってきたり、新しい家具のまわりをいつまでも歩いていたり。
こわがっているというより、変わってしまった分を、作り直しています。届いたばかりの棚には、まだその子のにおいがありません。お客さんのにおいは、いつもの道の上に残ります。だからもう一度まわって、上から自分の印を置いていく。しばらくすると落ち着いて寝てしまうのは、作り直しが終わったからです。
ひとつだけ、この見回りとは分けて見たい歩き方があります。落ち着きなく歩き続ける、トイレの出入りを何度も繰り返す、大きな声で鳴きながら歩く。順路をまわる時の歩き方とは違っていて、体の側に理由があることがあります。
見回りの順路に、飼い主も入っている
そして、こすりつけられているのは家具だけではありません。
足元に来て、体をぴたりと沿わせて歩いていく。あれも、ソファの角にしているのと同じ行動です。人にこすりつけるのは、自分と同じ仲間だという印をつけているからだと考えられています。家具に残すにおいと、飼い主に残すにおいは、同じ意味を持っています。
その子の順路には、飼い主が入っています。窓辺を見て、廊下を通って、ソファの裏を確認して、最後に足元へ来る。気まぐれに寄ってきたのではありません。まだ点検の途中で、いちばん最後があなたなのです。
まとめ
- 見回りは警備ではなく、確かめる時間。家が昨日と同じかを見にいっている
- 研究でも、猫は守るより「においを付け直して」いた(1994年 Canadian Journal of Zoology)
- 爪とぎは境目ではなく通り道に集まる。ソファの角やドア枠は、その子の印の場所
- 家が変わると見回りが増える。こわいのではなく、作り直している
- 順路には飼い主も入っている。足に体を沿わせるのは、同じ仲間だという印
今夜も、その子は同じ道を歩くはずです。窓辺、廊下、ソファの裏。そして最後に、足元へ来ます。世界が昨日と同じだったと確かめ終えて、いちばん最後に確かめに来たのが、あなたでした。
TOMORU|犬猫と暮らす毎日のために、ケアを考えています。
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